対の遺伝子
- - - 21. 誤解、ヤキモチ、青いアザ
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「有」
「……あ?」
「私、彬と絶交したからよろしく」
「おー……」

……ん?

「はぁ!?絶交!?」
「そう、絶交」

笑と彬の初めての大ゲンカは、こんな風にオレの元へと知らされた。


* * * * *


「んで?原因は何なんだよ」
「一身上の都合により、黙秘する」
「……そんなに落ち込んでると説得力がないぞ」
「……」

バスバスッと自分の部屋にあるサンドバックを殴りまくっていた笑を横目に、オレは近所にある彬のマンションへと足を運んでいた。
ったく……お前等二人と、明日の朝一緒に登校しなくちゃいけないオレの気持ちも考えろっちゅーの。

案の定、彬は死にそうな顔をして落ち込んでいて、やっぱり来てよかったとつくづく思った。

「このまま別れていいのか?」
「別れる気なんてない!」
「でも笑はお前とは絶交したって言ってたぞ」
「……でも別れたわけじゃない」

同じだろ。
このままだとお前等、来るのはバイバイだけだぞ。
そう口にすると、彬は心底嫌そうな顔をした。

「何でそういうことを言うんだよ」
「事実だろ?」
「……」
「オレは別にお前等が別れようがいいけどさ、お前が死ぬんじゃねえの?」
「……」

すました優等生面をして、実際のところ、ひどい笑依存症の彬だ。
たった3日、笑が友達と旅行に行っただけで死にそうになっているのに、別れるなんて耐えられるもんか。
だから実際のところ、二人が本当に別れるなんて思っちゃいないんだが、そこはそれ、少しはいじめておこう。

「……笑が」
「うん?」
「数学の浜地に、弁当を作ってきて」
「弁当?……あー、あれな」

罰ゲームだろ?とオレがサラリと口にすると、彬は驚いたように目を丸くした。

「……罰ゲーム?」
「そう」
「……何の?」
「え?何だっけな……確か女子の間で、この間の数学の小テストの点数の賭けをしてたって……おい?」
「賭け……」

呆然としている彬に、オレは二人のケンカ原因に思い当たった。

「……お前、ヤキモチ焼いたろ」
「……」
「理由も聞かずに怒ったんだろ」
「……」

バツが悪そうに顔を歪める彬に、オレは大きな、それはそれは大きなため息を大げさについた。
もちろん、わざとだ。
当たり前だろう?そんなベタな理由で巻き込まれたオレは被害者だよな?

「謝ってこいよ」
「……許してくれると思うか?」
「あいつがタダで許すと思うなら、まだまだお前も経験値が足りねえな」

翌日、彬の目の周りには、まるでマンガのような丸い青あざができていた。
わが妹ながら―――――ちょっとは手加減してやれよ、と思ったことは、秘密だ。