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crufts Obedience championships への道

日本でも飼い主が愛犬と共に家庭犬訓練競技に出場することは、今では当たり前のようになってきましたが、一昔前までは、訓練競技というとプロのクラスが主流でした。今回は日本のジャパンケネルクラブ(以下JKC)の家庭犬訓練競技会と対比しながら、イギリスのザ・ケネルクラブ(以下KC)の訓練競技会を紹介してみましょう。          .


★システム・・・

JKCではプロの多くは他人の犬をハンドリングして出場しています。また、訓練士資格というライセンスシステムがありますから、アマチュアとはきちんとライン引きされています。従って競技も「一般の部」と「アマチュア指導手の部」に分けられ、「アマチュア指導手の部」は当然プロが出場することはできませんが、しかし「一般の部」はプロのみということではなく、アマチュアも出場できます。
KCではプロトレーナーライセンス制度はありません。全て飼い主と愛犬がペアになり出場します。競技内容は、犬のすることですから何かしら突飛な課目があるなどということは考えられませんが、システムはかなり日本との違いを感じます。
KC傘下には多数のトレーニングクラブがあり、訓練競技会を開催しています。もちろん競技会のグレードによって、クラフトドッグショーのオビディエンス競技に出場できるチャンピオンシップCクラスを設けられる規模の競技会もあります。また、競技クラスはプレビギナー、ビギナー、ノービス、A、B、Cがあります。牡と牝のクラスにはっきりと分けられ、戦うことがないということは私にとって一番の驚きでした。
出場費はJKCの場合7000円〜10000円ですが、KCでは2000円ぐらいで大変リーズナヴルです。また、ジャッジの年齢的な点でもJKCの場合かなり若手の現役訓練士も多く見られますが、KCでは訓練士資格という制度がないわけですから、ほとんど本業をリタイヤした犬の訓練を趣味としている人生のベテランという方々がジャッジとなり、審査はボランティア的要素が強く、主催クラブによってはランチタイムにクラブメンバーの持ち寄った料理でジャッジの労をねぎらうこともあります。


★進行・・・

出場頭数が1000頭を越えているというのに進行は実にスムースです。出場順番はプログラムに発表されているゼッケン番号厳守です。この点ではJKCでも改善されてきましたが、昨年までかなりルーズで、ゼッケン番号は無視して、リンク入口に並んだ順であったり、呼び出しされても出てこなかったりということでした。特に時間がかかる「休止」課目はKCでは専用リンクが設けられており、クラス別に開始時間が明記されています。例えば「ビギナー牝クラス・11時から」となっていたら、他の課目の審査を受けていなくても全頭指定リンクに11時に集合しなければなりません。JKCでの「休止」は準高等科以上のクラスには規定課目として入っていますが、準高等科の場合10番目に設定されている課目ですので、どの出場犬も10番目に1分間行うために大変時間がかかります。
KCは表彰の点でも大変合理的で、クラスごとにリンクで担当ジャッジから成績発表が行われ、ロゼットが渡されます。従って、同時間にほとんどのクラスが終了するということになるわけです。


★クラスと課目・・・

JKCでのクラスは「初等・中等・準高等・高等・大学」が設定され、規定課目と自由課目で構成されています。規定は服従課目ですが、自由課目というのは飛んだり転がったりという芸的なものも認められています。多少の規制はありますが、基本的には希望のクラスに自由に出場することができます。KCでの課目構成は自由課目というのはありません。すべて規定課目で競われObedience といわれる服従課目中心で構成されています。
要するに「脚側行進、招呼、休止」などの課目なのですが、上のクラスになるに従って複雑になっていくということです。例えは、休止もプレビギナークラスだと犬のそばに立っている、ビギーナークラスになると犬から少し離れて立っている、更に上のクラスになると犬を待たせてリンクから出ていくというように難しくなっていくということです。当然待たせる時間も長く設定されていきます。また、「持来」や「物品選別」「前進」「遠隔操作」などもクラスにあわせて設定されてきます。「物品選別」などは自臭から始まり上のクラスでは他臭となります。
出場するクラスは自由とはいきません。大変厳しい規程があり、下のクラスからきちんと出場していかなければなりません。ノービスクラスで2回優勝しなければAクラスに出場できません。AからBクラスに出場するにはAで3回優勝しなければなりません。Bで3回優勝してCへと上がります。さて、この最高難度のCクラスで1回優勝更に3席以内3回獲得してチャンピオンシップCへチャレンジできます。チャンピオンシップCで優勝するとクラフトへの出場権利を与えられます。さて、JKCではトレーニングチャンピオンタイトルがありますが、規程ポイントに達すれば席次は関係なく取得できます。しかし、KCではオビディエンスチャンピオンタイトルを得るためには大変高いハードルを越えなければなりません。つまり、クラフトの出場権利を得られたからといってオベディエンスチャンピオンに繋がるわけではありません。チャンピオンシップCで3回優勝(全て異なるジャッジ)した犬がオベディエンスチャンピオンのタイトルを獲得できるのです。イギリスではオベディエンスチャンピオン犬には訓練愛好家からファンレターもおくられます。このシステムを知れば、それも納得できますね。

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愛犬と共に日々のトレーニングに取り組むことに、一つの目標を作ることは楽しいことだと思います。その目標が訓練競技会にチャレンジするということであっても良いのではないでしょうか。イギリスで見る競技会の光景はのんびりしたムードが漂い、出場者もジャッジも穏やかで、競い合いの場というピリピリした雰囲気は感じられません。また、競技中に逃走する犬はいまだかつて見たことがありません。競技に出場する基本的なことは、課目を全てクリアすることは当たり前だと認識している現れなのでしょう。これは、訓練競技を楽しむ愛犬家の皆さんに一番理解してほしいことです。

(資料協力 Crufts Obedience Champion Mrs Heather Wood Ford)