Crufts Obedience championships Rule

YOKOSUKA DOG SCHOOL 佐藤美津子
資料協力 Crufts Obedience champion
Mrs Heather WoodfFord


英国バーミンガムにて毎年3月に開催されているクラフトドッグショー(以下クラフト)ですが、日本で知られているドッグショーの形態とはかなり違う構成になっています。形態美チャンピオンショーがもちろん主軸になっていますが、1955年から同時進行にて訓練競技会も開催され、歴代のチャンピオンの中には3回優勝(犬は違う)という輝かしい指導手もいます。出場している全ての指導手はもちろん飼い主自身です。日本からクラフト視察に行く人々は大変多く、英国動物検疫ルールが変更になったためにショー部門は日本を含む諸外国からの出陳犬も2002年頃から多くみられるようになり、BISも外国からの出陳犬が獲得していくようにもなりました。ところが訓練競技部門は、検疫が緩和されたからといって外国からチャレンジすることはできません。なぜなら、出場希望をしたところで、定められた出場規定を英国内でクリアーしていない限り、権利は獲得できないからです。クラフト訓練競技会は“Obedience Championships”と“Inter Regional Obedience Competition”という二つの
競技が開催されます。“Obedience Championships”は個人戦“Inter Regional Obedience Competition”は団体戦というところです。しかし、今年初の試みとして“Crufts Obedience World Cup 2004”といって、『オランダ、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、英国、アメリカ、北アイルランド』による国際団体訓練競技戦が開催され
大変賑やかでした。                                                      .

★“Obedience Championships”

出場権利は、1月3日から翌年1月2日までの間に最高難度Cクラスのチャンピオンシップで優勝した犬のオーナーに、ケネルクラブからクラフト出場権利書が届きます。一度この権利を獲得すると、毎年クラフトに出場することができます。出場の有無は自由でしょうが、牝の場合はシーズンがきてしまえば出場はできません。    .
競技はDogs(牡)Bitches (牝) 別々に進行され、それぞれのチャンピオンが決まり牡牝が競うことはありません。エントリー頭数はその年により様々ですが、30頭前後で競われ、ジャッジは1人で、1課目ごとにスチュワードに減点数を告知します。また、チーフスチュワードが「ライトターン、レフトターン・・・」など指導手に指示を出し進行していきます。指導手は犬への虐待行為、ジャッジへの不満などは当然禁止です。              .
出場犬種の多くはワーキングシープドッグと呼ばれるボーダーコリーに準じる犬達です。Scent Discrimination
(物品選別)は最後に全頭が順次行いますが、服従課目の最高得点者が出てくると場内が静まり返り、犬の動きを固唾を呑んで見守り、本物品を持ち帰り、ジャッジの採点が終わると同時に優勝が決定した瞬間となり、
指笛がなり拍手と歓声にわき返ります。                                         .

★“Inter Regional Obedience Competition”

団体戦は英国を7地区に分け、『ノービス2頭・クラスA1頭・クラスB1頭・クラスC 2頭』補欠犬を入れて7頭でチーム構成され、クラスCが最高難度となります。しかし、ノービスといえども地区を代表して選ばれた犬達ですので素晴らしい能力といえます。また、クラス問わずCrossつまり雑種が多く含まれていることは、現在の日本の訓練競技会システムでは考えられないことかも知れません。能力には犬種は関係がないということでしょう。団体戦ですから、客席ではお揃いのウェアーで賑やかにチームに声援を送ります。                 .

★“Obedience Championships”競技課目

《クラスCの課目》 @ Heel Free (紐無脚側行進)60Pp ASend Away,Drop & Recall(前進及び招呼)40p 
BRetrieve(持来)30p C distant Control(遠隔操作)50p  DSit two minute(2分間座って休止)20p 
EDown ten minutes(10分間伏せて休止)50p FScent Discrimination(物品選別)50p 
の7課目で行われ、300ポイント満点で、減点分が会場内スクリーンに直ちに表示されます。

Heel Free (紐無脚側行進)は単に行進ではなく、歩調に変化を付けることは当然ですが、行進中に立止や伏せなども行い、右折左折など大変複雑になっており、1コース数分は軽く費やします。特に日本で見ない課目は
Send Away & Recall (前進及び招呼)ですが、ゲートが設けられ、犬に前進を命じ、ゲートを通った瞬間「 Down 」と指示します。指導手は犬に背を向けて歩き出し、途中で呼びます。犬は走り寄り、何事もなかったように脚側行進をします。休止は全頭で行われ、指導手は全員会場から退場します。伏せての休止は10分間という長さですが、バッタリと倒れたように寝かせたり、腰をくずした伏せの姿勢で待たせたり様々です。 Scent(物品選別)は選別台はありません。床に直に布を置きますが、Yの字型だったり、Gの字に似ていたり毎年そのデザインは若干かわります。ジャッジの臭いが本物品となり、誘惑物品は2人のスチュワードがそれぞれ2枚ずつ臭いを付け、残りの数枚は無臭。犬が踏んで布を散らかしたり咥えたりしなければ、誘惑物品はいちいちかえません。

★“Crufts Obedience World Cup ”

7カ国で争われた結果、イングランドが優勝したわけですが、AKC及びFCIも参考に特別ルールで行われ、コマンドは英語という規定になっていました。イギリスの競技課目にはない“飛越持来”もありました。大変面白かったのは、持来のダンベルが3個セットされていたことでした。指示された位置のダンベルを持って来なければいけないのですが、会場の全ての観客の人気を独り占めした犬がいました。1つ咥えて悩み、隣に置いてあるダンベルをながめて、「もう一つ持って行こう。」と思ったのでしょうか、2個咥えて持ち帰ったのです。競技だという緊張感を思わず忘れてしまうほほえましい一瞬でした。ま自国の国旗をフェイスペインティングした大勢の応援団が国旗を振って大声援、負けても底抜けに明るかったのはアメリカチームでした。                 .

クラフトの訓練競技会に十数回(年)通っているうちに様々な出会いがあり、優勝者とも知り合ったり、応援もするようになりました。昨年は知人が優勝したためにメインリンク内に入ることができ、グリーンのカーペットの上に立った時、それだけで思わず感激をしてしまいました。漠然と見るより応援する対象があるということで、私にとってクラフトがとても身近に感じるようになりました。確かに最高能力の特別の犬達かも知れませんが、その能力を引き出したのは飼い主自身だということを、1人でも多くの日本の愛犬家にご覧いただきたいと思います。


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