菩提樹(冬の旅)

 シューベルト(1797-1823
Frantz Peter Schubert フランツ・ペーター・シューベルト)は31歳で若くして夭折しましたが、その業績の素晴らしさは、年齢を超えて世界に賞賛されて止みません。モーツァルトもビゼーも若くして他界していますが、その曲は何世紀も超えてますます光を増すばかりです。音楽に限らず、真の創造的芸術は時代を超えて生き続けます。その一方で大変な芸術家でありながら、中々認められる機会に恵まれず、埋もれてしまった人たちがいるのも、また事実でしょう。
 筆者の幼少の頃は、世界三大作曲家は、バッハ、ベートーベン、シューベルトであると言っていた人がいました。何を根拠にしていたかは分かりませんが、バッハ、ベートーベンはともかく、シューベルトが入っていたのは、明治時代からこの「菩提樹」とか「野ばら」とか日本人に親しみ易い歌曲が入って来ていたからでしょうか。はたまた映画『未完成交響曲』の影響でしょうか。シューベルトの曲が素晴らしいものであることは変わりありませんが、この三大作曲家というやつは気に食いません。いえ、シューベルトが入っていたからではなく、何でも<三大○○>というのが気に食わないのです。じゃあ、ハイドンは、ヘンデルは、メンデルスゾーンは、モーツァルトは、リストは、ショパンは、ブラームスは、シューマンは、ビゼーは、チャイコフスキーは・・・・・と、(あれが入っとらんぞとクレームがつきそうですが)だれがだれより優れているか、などは収拾がつかなくなること必定なのです。一番気に食わないのは文化庁が主催して決めた「残したい曲百選」です。あまたある曲のある中で何〜〜にが<百選>だか・・・文化庁には、<文部省唱歌>とかいって作詞作曲者を不詳としたものをキチンと再発掘して、作詞作曲者名を特定してもらいたいものです。
シューベルトと離れてしまって失礼しましたが、この「菩提樹」は、ドイツ・デッサウ出身のヴィルヘルム・ミュラー(
Wilhelm Müller)の二十四編からなる詩集『冬の旅(Winterreise)』に曲を付けたものの内の第五編「菩提樹(Der Lindenbaum)」で、歌曲としてはシューベルトの代表作となっています。 (3’00”)

    *10/OCT/28
 MIDI制作:滝野細道


       Frantz Peter Schubert

        菩提樹
            Der Lindenbaum