茅ヶ崎海岸の残照
屋久島のモーモーランド

「春介閑話(74)」 ちょっと屋久島まで【4】 夕陽に黒い牛

「南信州」新聞」に掲載 TOP    (本編はデータ消失につき原稿を掲載します)


春介閑話(74)
ちょっと屋久島まで(4)

【夕陽と黒い牛】


 何だ、春介は自ら滝ヤラレと称しているのに、夕陽なんぞに心を奪われて、肝心の大川

の滝をおろそかにするとは何事か! とお叱りの言葉が聞こえて来るようだ。しかし、実は

滝よりも夕陽にヤラレた方がはるかに早く、それも<キャノンEOS5>という一眼レフ

カメラを入手した嬉しさに撮り捲くった写真の内の一枚、<茅ヶ崎海岸の残照>が望外の

評価を受け、調子に乗ったのが始まり。夕陽から、次いで、風景写真全般、旭日、紅葉、

桜と特化していき、その間、滝々の傍を通り過ぎたが見向きもしなかった。或る時、駒ケ

根市の山岳写真家津野祐次氏の<精進ヶ滝>の写真を見て、その出来の素晴らしさと大自

然を締める滝の姿に感動し、「自分もこんな写真が撮れたらなぁ」と滝ヤラレにのめり込

んで行ったのが真相。滝は北海道から九州まで出掛ける。ついでに夕陽も、とヤラレ度は

逆転したが、機会があれば撮りたい気持ちは変わらなかった。

 牛達は餌でもくれると思ったのか、集まってきてモーモーの大合唱。牧草を毟って食べ

させたりして、しばし至福の時を過ごしたが、はっと気がつくと、真逆光に黒い牛。銀塩

カメラでは黒く潰れてしまって映るわきゃないですね。連れ合いはデジカメを持っていた

が、デジカメでも当然駄目と決めつけ、モニター画面を覗いて見ることすらしなかった。

帰宅後プリントして見たら、果たして銀塩フィルムは全滅だった。

 牛のモーモーの合唱を後ろに聞いて、大川の滝へ。しかし、道草ならぬ牧草を喰った報

いで、時刻は既に六時四十分を回り、大川の滝は人の顔も定かでない夕闇の中にあった。

最早、銀塩フイルムではとても無理である。傍らで連れ合いがデジカメをカシャカシャ。

「何をやっとるの?」徒労はいくらしても徒労、モーモーの二の舞。しかし「ほら、見て

みて。うまく撮れてるわよ!」な、なんと。メモリー画面には、昼間同然とは言えないま

でも、木々も飛沫も空もクッキリ撮れているではないか。デジカメはかなり暗いところで

も撮れるとは聞いていたが、これは・・・「私の日頃の行いがいいからよ」連れ合いは得

意満面。行いがええぐらいで、デジカメが言うことききゃー、カメラ屋なんぞいらねえ!

と、意味不明の言葉を密かに懐きつつ、「ほんと、凄いネェ」

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デジカメの大川の滝


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