メリット(核拡散の危険性防止)

メリットの重要性を説明します。

現状の日本の原子力政策においては、日本が核武装すると見られる危険性があります。

第一に、日本の原子力施設は、核兵器を生産する能力をすでに保有しています。

九州大学教授の吉岡 斉氏は、1997年に以下のように述べています。
「日本は従来から,核兵器を持たない国の中では,国際的に突出した核武装の潜在力を 保有してきた。-国的施設として実用規模の再処理工場とウラン濃縮工場の双方を保有 しているのは,核兵器を持つ国を除けば日本だけである。日本を除く全ての核兵器を 持たない国は,どちらの施設も-国的施設として保有していない。ところで兵器級 プルトニウムは,軽水炉の使用済み核燃料から抽出したプルトニウムに,プルトニウム 濃縮を行なうことによって,作ることもできる。それに好適なのは,日本原子力研究所 に作られた原子レーザー法(AVLIS法)の実験施設であり,1トンSWU/年の能力をもつ。 これを使えば,年間160kgのプルトニウムについて,その「濃縮度」(プルトニウム239の 含有率)を60%から94%に高めることができる。」
(『もんじゅ事故と日本のプルトニウム政策』七つ森書館、1997年、253-254頁より)

第二に、日本政府が核兵器を保有しようとする可能性は、極めて高いものです。政府自体が、 核兵器開発能力を保有しようとしています。

京都大学原子炉実験所助手の小出裕章氏と医学博士の足立明氏は、1997年に述べています。
「ところが、政府の高官は、どうもそうは思っていない節があります。1982年4月5日、 参議院で議員の質問に答えた政府側委員は、次のような答弁をしています。「自衛の ための必要最小限度を越えない戦方を保持することは憲法によっても禁止されておら ない。したがって、右の限度にとどまるものである限り、核兵器であろうと通常兵器 であるとを間わずこれを保持することは禁ずるところではない。」つまり「自衛のため なら、核兵器を持ってもよい」ということです。さらに、1992年11月29日の朝日新聞に は、外務省の幹部の談話として、次のような記事が載っていました。「個人としての 見解だが、日本の外交力の裏付けとして、核武装の選択の可能性を捨ててしまわない方 がいい。保有能力は持つが、当面、政策として持たない、という形でいく。そのために も、プルトニウムの蓄積と、ミサイルに転用できる口ケット技術は開発しておかなけれ ばならない。」日本は核武装を準備すべきだということが、なんと具体的に語られてい ることか。これが、政府幹部の本音なのです。」
(『原子力と共存できるか』かもがわ出版、144頁)

このような核武装への動きは、諸外国を核兵器獲得に走らせます

第一に、諸外国は、日本は核武装する能力があるがゆえに、核武装の恐れがあると考えています。

軍事評論家の江畑謙介氏は、1999年にこう述べています。
「日本がいくら唯一の被爆国としての経験に基づく核廃絶を訴えても、日本の近隣に核兵器保有国 が存在する以上、今ではなくとも、将来において日本が必要と判断するなら、核兵器を独自に持つ だろうと予想する。それは我々日本人があり得ないと考えようとも、日本を離れた外側から見るな ら、非常に説得力がある予想である。日本は核兵器を開発するに十分な技術と材料と経済力があり、 後はその決断だけである。」(『安全保障とは何か』平凡社新書、1999年、164頁より)

第二に、それゆえ、日本の核開発の進展は諸外国を不安にさせ、核拡散を促進します。

九州大学教授、吉岡 斉氏の1997年の言明です。
「日本が引き続き高速増殖炉開発を進めることは、日本の機微核技術(Sensitive Nuclear Technology) -軍事転用が容易な核技術-の技術水準を大幅に高める。それは自動的に,日本の核武装の脅威を増大 させるものである。同時にそれは,世界平和にも悪影響を及ぼす。なぜなら日本のアグレッシブな動き は世界各国を刺激し,多くの国が自分も機微核技術(SNT)を保有しなければならないと考えるように なるからである。またそうした国々が,日本と同等の権利を機微核技術(SNT)の民事利用に関して主張 することを,国際社会が押し止める根拠が無くなるので,国際核不拡散体制は重大な打撃を受けること になるからである。さらに,兵器用核物質生産禁止条約(カットオフ条約)の締結に向けての国際社会の 努力が,日本-国のわがままのおかげで台無しとなる可能性もある。」(前掲書、249-250頁より)

その結果、 核不拡散体制の崩壊による核拡散による核戦争が起こります

朝日新聞社外報部の吉田文彦氏は1995年に以下のように述べています。
「冷戦が終わり、風景が一変した。核超大国の核軍縮が進展するにつれて、国連安全保障理事会の 常任理事国(P5)以外への核拡散が、相対的に大きな問題となってきたのだ。地球大の核戦争の 危機が大きく後退した半面、安全保障の焦点が地域問題に移ったため、核拡散が進めば地域紛争で 核が使われる危険が高まり、それがエスカレートして規模の大きな核戦争に拡大しかねないとの 懸念があったからだ。」(『核解体』岩波新書、1995年、132頁より)

しかし、プラン導入により、核拡散の危険性は除去されます。なぜなら、重要性で示した核兵器生産 の能力の元である原子力発電をやめることで、核兵器生産能力自体を放棄することになるからです。

朝日新聞社外報部の吉田文彦氏は1995年に以下のように述べています。
「そもそも、核拡散の危険と隣り合わせで国際政治を考えなくてはならないのは、主に原発で、 ウランとプルトニウムという核分裂物質を使うからだ。原発利用には、事故の危険性、「核のゴミ」 の処理という難問もつきまとう。したがって、核分裂物質の平和利用、つまり、核分裂物質で電気を 起こすことをあきらめれば、核拡散の危険は消え、原発利用にともなう不安を遠ざけることにも つながる。(前掲書、221頁より)」

その結果、日本は他国から脅威とは思われなくなるので核拡散は起こりません。

「重要性」
核戦争が勃発すれば、多くの人たちが核兵器の犠牲になり、取り返しのつかないことになります。 核戦争は何としてでも回避しなくてはなりません。その意味で、この危険を回避するメリットは 非常に重要です。