学園レポート 第7回

北嶺中・高ディベート部近況報告

北嶺中・高等学校 ディベートクラブ顧問 石山 昌周

1 今季の到達点

 本校の活動も5年目を迎えた。毎年の活動はディベート甲子園(以下、甲子園)で一つのピークに達することになるが、今季はこれまでを上回る成果を残し(初の中高同時全国出場ならびにベスト8進出、Z会ディベートエッセイ論文グランプリ論文部門、最優秀賞・地区奨励賞・学校賞受賞)、生徒共々心地よい達成感に包まれてシーズンを終えることができた。

 遅々とした歩みかもしれないが、部員たちは前年度の到達点を乗り越えて着実に前進を続けている。二年に渡りチームを牽引し続けた「精神的支柱」、青山第三代部長も引退し、園田第四代部長・土居副部長が後を引き継ぐこととなった。第四世代のメンバーたちは、さらなる高みを目指し日々研鑽を積んでいる。以下は今季のオフ期間の取り組みについて紹介したい。

2 新たな取り組み

2-1 ローカルディベート大会「北嶺杯」開催[発信者としての取り組みへ]

 「北嶺杯」(11/7実施・甲子園フォーマット・育児休暇論題)は、シーズンオフにおける他校との交流や練習の機会がほぼ皆無という現状を、何とか打開したいという欲求から生まれた試合会だ。連盟・北大ディベートサークルの方々の協力を得て成功にこぎつけたが、立案から会場の確保、広報活動、練習試合会の開催、当日の審判依頼、モデル立論・資料の作成配布に至るほぼすべてが部員たちの手によるものである。

 甲子園に向けての講習会、練習試合会には欠かさず参加しているが、それはあくまで受信者としてのものであった。今回の北嶺杯は発信者としての立場となり、自分たちの抱える問題を発展的に解決しようとする試みであり、大いに新世代チームを成長させるイベントとなった。

 私もムードを盛り上げるために、優勝カップを寄贈した。残念ながら他団体の参加は少なかったが、全ての日程が無事に終了したとき、生徒たちと喜びを分かち合うことができた。

 北嶺杯閉幕後も、部長を中心として他校への練習試合の申し込みを積極的に行っている。中高一貫校という強みを生かし、中高問わず発信を続けている最中である。このような発信者としての活動が、本道のディベート活動の裾野の拡大につながればと願っている。

2-2 部員相互のディベートレクチャー[蓄積と伝承のサイクル]

 OBから後輩へのアドバイスという形で始まった部内レクチャーだが、現在では、在校生間で相互の実力向上を企図して実施している。このレクチャーが、試合中心になりがちなオフ期間の練習にアクセントを与えている。

 生徒たちが参加した研修や実戦を通じて培ったことを、講義形式で後輩に伝達するもので、題材もリサーチ技術(資料の探し方からネット書店の利用法まで!)・基礎知識、理論など初〜中級者向けの範囲で多岐に渡る。

 北海道でも連盟やProject Cats主催の研修が実施されているが、部員の全てが参加できるとは限らず、内容的に初心者にとっては高度なこともある。そんな場合も、研修に参加した上級生が自分たちの学んだことを後輩たちにレクチャーする。部員全体に知識の共有が図れるばかりでなく、講師となった生徒も「わかりやすく伝える」ための工夫が要求されるため、スピーチ能力の向上にも寄与している。四年の活動の中で、技術・知識の蓄積と伝承のサイクルが徐々に洗練されてきたと言えるだろう。

 こうした活動を続けながら、雪深い北嶺の山では新シーズンを心待ちにしている。

 もちろん、愛知万博での試合を夢見て。

本稿は『トライアングル』第49号(2005年1月号)に掲載されたものです。