地方のディベートのレベルアップを目指して 

―ディベート教育功労賞受賞にあたってー

岡山洋一(札幌ディベート研究所 代表)


 今回、第1回ディベート教育功労賞を受賞し、たいへん光栄に思います。日本の教育ディベート指導者の方々を代表して賞をいただいたことで、これからさらにディベート活動にまい進して行く決意を新たにしております。

私とディベートとの出会いは、20数年前にさかのぼります。学生時代にディベートに出会い、最初は英語で、そしてここ10年くらいは日本語でのディベートを中心に行っております。

札幌青年会議所のディベート指導をはじめ、官公庁、先生への指導、中学・高校生の指導、また今は休眠中ですが、社会人のディベートの会などを行ってきました。ディベート甲子園期間中は中学・高校生の練習相手になったりもしています。私も含めて、小中高・大学、ディベート甲子園など、北海道のディベート活動が、今年札幌タイムス紙上で連載されましたことも望外の喜びです。

さらに今年の夏は二重に嬉しいことがありました。もちろん一つは、ディベート教育功労賞を受賞したことです。もう一つは、北海道教育大学附属札幌中学校が、北海道の中学校では初めての、ビッグサイトで戦って4位に入賞したことです。これは北海道のような地方の学校でも、ビッグサイトで戦えるんだという証明になったのではないかと思います。

やはり全国の予選を勝ち抜いてきたチームだけあって、ブロックを勝ち抜くことは容易ではありません。強豪チームがひしめく関東や東海地区のチームに勝つことは、並大抵の準備ではすまないでしょう。

北海道にいるチームは、地区予選を勝ち抜くことすら難しいのです。参加チームが少ないため、予選までにもなかなか練習試合ができなかったり、大きな図書館が少ないために、なかなかリサーチが進まなかったりと、数々の足かせがあります。ですから、予選に勝ち抜いて東京の本選に行ける事が決まると、本当に嬉しいものです。

しかし、もちろん予選に勝ち抜いて、東京へ行くことが目的ではありません。得てして予選を勝ち抜いたら、東京へ行くこと自体が目的となってしまうチームが多いのではないかと思います。

しかしそれでは、東京で勝ち上がることはできないのです。「せめて一勝でもできれば」というような気持ちでは、ブロックを勝ち上がることはおろか、一勝もできないでしょう。

ビッグサイトで戦おうという、強い気持ちがなければ、ビッグサイトで戦うこともできません。ブロックを勝ち上がるんだ、ビッグサイトに行くんだという強い気持ちがなければだめなのです。

そのためには何をしたら良いのでしょうか。やるべきことは決まっています。もっともっとリサーチをする、さらに議論を練る、練習試合を多くする、他のチーム・地区の情報を集めるなどです。しかし地方にいると、この決まりきったことがなかなかできないのが実情です。

地方にいることによるデメリットは多々あります。練習試合ができない、リサーチが進まない、他のチームの情報が入らない、指導者・コーチがいない、大会が少ないなどです。これらはたいへん大きな問題です。そして、簡単に解決できる問題ではないでしょう。

では、仕方ないとあきらめてしまうのでしょうか。負けてしまっても良いのでしょうか。負けても仕方がないのでしょうか。地方の学校は、関東や東海のような強豪チームには勝てないのでしょうか。

ここであきらめてしまっては何も進みません。東京で勝つためにはどうしたら良いのかを考えなければなりません。足りない分は頭と時間とお金(あれば)を使って補うしかないのです。

私はディベートを始めてからずっと北海道にいますので、このような悩みも良く分かります。そのためにも、もっともっと指導に、練習相手にと、努力していきたいと思います。特に地方にいると難しいリサーチの問題も、解決策はあると常々思っています。今、「リサーチの方法」を書き始めています。次回の論題発表までには書き上げようと思っています。少しづつでも地方がレベルアップし、そのことによって、全国のディベートがレベルアップしていくことを望んでいます。

これからも益々ディベート活動にまい進していきます。ありがとうございました。


本稿は「トライアングル No. 31 2001.9.27」に掲載されたものです。