チョマトー沼

所在:帯広市西15条北2丁目

 アイヌ伝説の沼「チョマトー」は、帯広市の西15条通りぞいにある、樹林に覆われた古い沼である。

 ある年、日高静内の染退人(シブチャリアイヌ)が十勝に攻め込んできた。腹を減らした彼らは、昔から鳥類の飛来が多く、絶好の猟場であったこの沼で鴨をとっていた。そこを十勝アイヌに囲まれ、激烈な闘争の後全滅し、死体から流れ出る血が沼を赤く染めた。そのためチョマトー沼(赤い血の沼)と呼ばれるようになったという。

 チョマトー沼の由来については、この他にも北見アイヌとの争いによるものもある。またチョマトーの意味も、「悪霊潜む沼」「悪い沼」「腐敗せる沼」など諸説ある。

 現在はその一部(1,730平方メートル)しか残っていないが、かつては周囲25町歩(約2,500平方メートル)もある大きな沼であった。安政5年(1858年)にここを訪れた松浦武四郎は「十勝日誌」に、川かと思うような大きな沼があったと記している。

 大正5年(1916年)支庁がこの付近の開拓に着手したが、祟りを恐れるアイヌの人々の反対にあったため、関係者は伏古祠(ふしこし)を祀って、慰霊祭を行い工事を続行した。

 また昭和30年代になって、帯広市がこの沼の埋め立て工事計画を立てたところ、「数少ないアイヌ文化を残すべきだ」との反対意見が出たため、計画を断念した。

 この反対運動がきっかけになって、「血妖魔沼戦没者慰霊碑」が建設され、昭和48年から慰霊祭が催されることとなった(毎年9月第3日曜日)。