この「湖底の故郷」は、東京都民の水瓶である<小河内ダム>建設のため、悠久の土地を追われた奥多摩小河内地区600世帯、3,000名の人々に送られた、情熱の詩人島田磐也の哀歌です。昭和12年にこの曲が直立不動の東海林太郎の歌声でリリースされたとき、全国的に共感を得て、大ヒットとなりました。戦前のことでお上の命令に逆らう術もなく、結局はこの歌のように、流離漂白の旅路となって、辛苦を嘗めた人たちも多かったようですが、このメロディーを口ずさんで悲哀を慰められた人もまた多かったようです。その一人飛田栗山氏推進によりこの歌の歌碑が奥多摩湖畔に建立されたのは昭和41年のことです。島田磐也は「裏町人生」「或る雨の午後」「夜霧のブルース」など数多く作詞していますが、作曲の鈴木武夫については、「佐渡の故郷」くらいしかデータがありません。
JASRAC Code
No.031−0040−4
湖底の故郷
作詞:島田磐也(C)
作曲:鈴木武夫(C)
歌唱:東海林太郎
MIDI制作:滝野細道
(一)
夕陽は赤し 身は悲し
涙は熱く 頬濡らす
さらば湖底の わが村よ
幼き夢の 揺り籠よ
(二)
あてなき道を 辿(たど)り行く
流離(ながれ)の旅は 涙さえ
枯れて儚き 想い出よ
ああ うらぶれの 身は何処
(三)
別れは辛し 胸 傷(いた)し
何処に求む 故郷よ
今ぞ当て無き 漂白(さすらい)の
旅路へ上(のぼ)る 今日の空