JASRAC No.085-0006-1  昭和13年(1938年)
麦と兵隊  作詞:藤田まさと
 作曲:大村能章
 歌唱:東海林太郎
 編曲・制作:滝野細道

(一)
徐州徐州と 人馬は進む
徐州居よいか 住みよいか
洒落た文句に 振り返りゃ
お国訛(なま)りの おけさ節
ひげがほほえむ 麦畠

 (三)
 腕をたたいて 遥かな空を
 仰ぐ眸(ひとみ)に 雲が飛ぶ
 遠く祖国を はなれ来て
 しみじみ知った 祖国愛
 友よ来て見よ あの雲を
(二)
友を背にして 道なき道を
行けば戦野は 夜の雨
「すまぬすまぬ」を 背中に聞けば
「馬鹿を云うな」と また進む
兵の歩みの 頼もしさ

 (四)
 行けど進めど 麦また麦の
 波の深さよ 夜の寒さ
 声を殺して 黙々と
 影を落として 粛々と
 兵は徐州へ 前線へ
 
童謡・唱歌・懐メロ 八洲秀章&抒情歌 昭和戦前の流行歌・新民謡 昭和戦後の歌謡曲・演歌    *08/SEP/10

この「麦と兵隊」は火野葦平が戦地報道として従軍し、帰国して纏めた同名小説<麦と兵隊>を映画化したときの主題歌です。作詞の藤田まさとは、最初<生きて帰った 生きて帰った>という出だしの歌詞を作ったところ、<軍人は死ぬことを本分とするものである>と軍部から大目玉をくらった、というエピソードがあったそうです。しかしこの歌詞をよく見てみますと、戦意高揚ではなく、むしろ兵の悲しみ苦しみと望郷の思いが伝わって来るような不思議な軍歌に見えてきます。藤田まさとのこの心の中の気持ちが一挙に現れたのが昭和29年の「岸壁の母」だったのでしょう。この「麦・・」に「土と兵隊」「梅と兵隊」が続きます。