この「麦と兵隊」は火野葦平が戦地報道として従軍し、帰国して纏めた同名小説<麦と兵隊>を映画化したときの主題歌です。作詞の藤田まさとは、最初<生きて帰った 生きて帰った>という出だしの歌詞を作ったところ、<軍人は死ぬことを本分とするものである>と軍部から大目玉をくらった、というエピソードがあったそうです。しかしこの歌詞をよく見てみますと、戦意高揚ではなく、むしろ兵の悲しみ苦しみと望郷の思いが伝わって来るような不思議な軍歌に見えてきます。藤田まさとのこの心の中の気持ちが一挙に現れたのが昭和29年の「岸壁の母」だったのでしょう。この「麦・・」に「土と兵隊」「梅と兵隊」が続きます。 |