昭和24年(1949年)         JASRAC No.059-0152-9 

夏の思い出   NHKラジオ歌謡 

作詞:江間章子(えましょうこ)       作曲:中田喜直
歌唱:石井好子                MIDI制作:滝野細道

(一)
夏がくれば 思い出す
はるかな尾瀬 遠い空
霧のなかに うかびくる
やさしい影 野の小径

水芭蕉の花が 咲いている
夢見て咲いている 水の辺
(ほと)
石楠花
(しゃくなげ)色に たそがれる
はるかな尾瀬 遠い空

 
 
(二)
夏がくれば 思い出す
はるかな尾瀬 野の旅よ
花のなかに そよそよと
ゆれゆれる 浮き島よ

水芭蕉の花が 匂っている
夢見て匂っている 水の辺り
まなこつぶれば なつかしい
はるかな尾瀬 遠い空
 
 
八洲秀章&抒情歌 懐メロ 童謡・唱歌    「細道のMIDI倶楽部」TOPへ *08/5/8
細道の尾瀬紀行

江間章子【えましょうこ、本名:同じ、大正2年(1923年)3月13日〜(2005年)3月12日、新潟県出身】は四歳で岩手県八幡平に移住し十二歳までそこに過ごしたことから、尾瀬を訪れた時にその八幡平を思い出しながらこの詩を作った、ということです。江間章子は大正初めの生まれといこともあってか、この「夏の思い出」も難しい漢字が随所に出てきます。それが楽譜によってバラバラで、一番だけでも<うかびくる=浮かび来る>、<やさしい影=優しい影>、<たそがれる=黄昏れる>とさまざまです。漢字が少ないのは教科書用でしょうか、ご自身で何度か改訂された節も窺えますので、どれが本物<原詩>であるとはとても言いがたい状況です。ここでは一応NHKラジオ歌謡のための作詞であったことも踏まえ、全音の『思い出のラジオ歌謡選曲集』のものを掲載することとします。日本の小説詩歌などにとって、どこに漢字を使って、どこを平仮名やカタカナにするかは全体のトーンのためには重要な要素です。また著作権上も同一性保持特権にも絡んで来る問題でもあります。しかし歌詞の場合、<石楠花=しゃくなげ>と読めなかったり、<水の辺り=みずのほとり>を<みずのあたり>と読んでは歌を歌えません。ルビを振ったり、読みやすくするのは、歌詞ゆえの配慮といえましょうか。