昭和29年(1954年)        JASRAC Code No.095−9095−1

   りんどうの花咲けば


        作詞:鈴木比呂志(C)
        作曲:八洲秀章(C)
        歌唱:鳴海日出夫
        MIDI制作:滝野細道



        (一)
        心に燃えて いたけれど
        口にはいえぬ 頃だった
        りんどうの花 ほの揺れて
        君のうなじも 白かった


     (二)
     かげぐちなども 言ったけど
     いとしくなって 泣いたっけ
     りんどうの花 むらさきに
     前髪匂う やさしさよ


     (三)
     心に咲いて いたけれど
     ほのかな夢の 花だった
     りんどうの花 散る頃に
     旅ゆく雲を 見つめてた


       Photoes taken by Hosomichi

      

      童謡・唱歌  懐メロ  八洲秀章&抒情歌
      「細道のMIDI倶楽部」TOPへ  *2008/MAY/10


         八洲秀章の愛の曲は、当倶楽部UP内で見る限り、淡い恋、片思いの恋情、実らなかった恋、
      などが圧倒的に多く、失恋の歌謡曲とは大きな違いがあります。皆、恋の終わりを抒情的に詠
      っており、濃密で絶望的な恋の終焉を表わしているものは殆どありません。この連綿と続く感
      性は「さくら貝の唄」に代表されるものですが、淡い恋心を故郷に残して上京してきて、成就
      が適わなかった横山八重子さんとの死別という別れが影響しているものと思われてなりません。
      そうは言っても、歌詞はそれぞれ別人の作詞ではないかとの反論もありますが、これほどの同
      一性は、企画に当たっての作曲者の意向が強く反映されたものと思わざるを得ません。
      中でもこの「りんどうの花咲けば」は少し異質で、少年から青年に移る心の葛藤が見事に表わ
      されています。これは、「さくら貝の唄」、「砂山の花」、「チャペルの鐘」、「山のけむり」、
      「高原の旅愁」の底流に流れるものと違い、鈴木義光として北海道真狩村での横山八重子さん
      との日々を思わせるものです。作詞の鈴木比呂志もその辺を意識したのではないかと思わせま
      す。
      細道はこの歌を聴くと、島崎藤村の「初恋」を想い出します。「髪」が一つの象徴なのでしょ
      うか。少年から青年になるこころの動きが、この「りんどうの花咲けば」と全く同様に重なっ
      ているように思われるのです。鈴木比呂志は国文学者の係累で、自身も古典の研究家で、源氏
      物語の現代文訳で高名ですので、藤村の「初恋」が念頭にあったのは想像に難くありません。
      「初恋」をこの「りんどうの花咲けば」のメロデイーでご試聴下さい。