(四)
わたしゃ水草 風吹くままに
流れ流れて はてしらず
昼は旅して 夜は夜で踊り
末はいずこで 果てるやら

これは、トルストイの<贖罪>を戯曲化した<生ける屍>の劇中歌として北原白秋が作詞したものですが、中山晋平作曲のいかにも歌謡曲らしい最初のものといえましょう。同じ劇中歌に「にくいあん畜生」「もう一度生まれたら」などがあります。それまでは添田唖蝉坊などの<○○節>や<鉄道省歌><人を恋うる歌>などありましたが、歌謡曲とよべるものではなく、時代は大正に入り、大正ロマンのなかで中山晋平の「カチューシャの唄」「旅人の唄」「ゴンドラの唄」や前述の<生ける屍>の劇中歌、大正オペラ<カルメン>の劇中歌「別れの唄」「花園の恋」「酒場の唄」あたりから西洋の息吹が感じられる歌謡曲となっていったのでしょう。この唄は後の「流浪の旅」「急げ幌馬車」「国境の町」に多大の影響をあたえていったものと思われます。中山晋平は、野口雨情とも「波浮の港」や「船頭小唄」などの歌謡曲も作りましたが、やはり野口とは童謡が多いようですね。 Photo by Hosomichi

     大正6年(1918年)  (著作権消滅曲) 

     さすらいの唄     


     作詞:北原白秋(PD)
     作曲:中山晋平(PD)
     歌唱:UNKNOWN
     MIDI制作:滝野細道



    (一)
    行こか戻ろか 北極光オーロラの下を
    露霊ロシアは北国 はてしらず
    西は夕焼ゆうやけ 東は夜明け
    鐘が鳴ります 中空なかぞら


   (二)
    泣くにゃ明るし 急げば暗し
    遠いあかりも ちらちらと
    とまれ幌馬車 やすめよ黒馬あお
    明日あすの旅路が ないじゃなし

  

   (三)
    燃ゆる思いを 荒野あれのにさらし
    馬は氷の 上を踏む
    人は冷たし 我が身はいとし
    町の酒場は まだ遠し


   懐メロ 八洲秀章&抒情歌 童謡・唱歌  「細道のMIDI倶楽部」TOPへ  *2008/MAY/05 幌馬車イラスト:「みてみ亭」