明治38年(1905年)
JASRAC No.044-0132-8
戦友
作詞:真下飛泉
作曲:三善和気
歌唱:
制作:滝野細道
(一)
ここは御国を何百里 
はなれて遠き満州の
赤い夕陽に照らされて 
友は野末の石の下

(八)
空しく冷えて魂は 
国へ帰ったポケットに
時計ばかりがコチコチと 
動いているも情けなや
 
(二)
思えば悲し昨日まで 
真っ先駈けて突進し
敵をさんざん懲(こら)したる 
勇士はここに眠れるか
 
(九)
思えば去年船出して 
御国が見えずなったとき
玄界灘に手を握り 
名を名乗ったが始めにて


(三)
ああ戦いの最中に 
となりに居ったこの友の
にわかにはたと倒れしを 
われは思わず駈け寄りて
(十)
それよりのちは一本の
煙草も二人わけて喫み
着いた手紙も見せ合うて
身の上話繰り返し

(四)
軍律厳しき中なれど 
これが見捨てて置かりょうか
「しっかりせよ」と抱き起こし 
仮包帯も弾丸
(たま)のなか
 
(十一)
肩をだいては口癖に
「どうせ命はないものよ
死んだら骨を頼むぞ」と
言い交わしたる二人仲
(五)
折からおこる突貫に 
友はようよう顔あげて
「御国のためだかまわずに 
後れてくれな」と目に涙
 
(十二)
思いもよらずわれ一人 
不思議に命長らえて
赤い夕陽の満州に 
友の塚穴
(つかあな)掘ろうとは
 
(六)
あとに心は残れども 
残しちゃならぬこの身体
「それじゃ行くよ」と別れたが
(なが)の別れとなったのか

(十三)
隈なく晴れた月今宵
心しみじみ筆とって
友の最期をこまごまと
親御(おやご)へ送るこの手紙

(七)
戦いすんで日が暮れて 
探しに戻る心では
どうぞ生きていてくれよ 
物なと言えと願うたに
(十四)
筆の運びは拙(つたな)いが
行燈のかげで親たちの
読まるる心思い遣り
思わず落とす一滴(ひとしずく)
 童謡・唱歌・懐メロ 八洲秀章&抒情歌 昭和戦前の流行歌・新民謡 昭和戦後の歌謡曲・演歌   *08/SEP/03