昭和14年(1939年) JASRAC No.039-0190-4
作詞:川俣栄一
作曲:上原げんと
歌唱:岡  晴夫
制作:滝野細道

   
(一)
紅いランタン 仄かに揺れる
宵の上海 花売り娘
誰のかたみか 可愛い指輪
じっと見つめて 優しい瞳
ああ上海の 花売り娘

(二)
霧の夕べも 小雨の宵も
港上海 花売り娘
白い花籠 ピンクのリボン
繻子
(しゅす)も懐かし 黄色の小靴
ああ上海の 花売り娘

(三)
星も胡弓も 琥珀(こはく)の酒も
夢の上海 花売り娘
パイプくわえた マドロス達の
ふかす煙りの 消えゆく影に
ああ上海の 花売り娘

懐メロ 童謡・唱歌 八洲秀章&抒情歌
*09/NOV/12 「細道のMIDI倶楽部」TOPへ
Illustration by Hosomichi

この「上海の花売娘」は作曲:上原げんと、唄:岡晴夫の<花売娘シリーズ>の最初のもので、翌年の1940年(昭和15年)に「広東の花売娘」「南京の花売娘」(いずれも佐藤惣之助の作詞)と立て続けに発表され、戦後の1946年(昭和21年)に「東京の花売娘」(佐々詩生作詞)と続きました。<花売娘>というのは、戦中、戦後や貧困の時代に、貧しさゆえに口に糊するため、いたいけな少女が街頭に立って花を一本一本売る姿が目に浮かびます。しかし戦前の<花売娘シリーズ>は<花>のイメージから貧困、暗さといったものを払拭し、あくまで可愛らしく平和なシーンを彷彿させるように描いています。これは<楽しく明るい南の国>の唄同様、上海、広東、南京を含む中国へ、中国へ、の憧憬を掻き立てる、検閲当局公認のものでもあったのでしょう。