映画「喜びも悲しみも幾歳月」は1957年に、監督木下恵介、主演:佐田啓二(夫有沢四朗)、高峰秀子(妻きよ子)による、灯台守の一生を描いたものである。全国に250以上もある灯台に転勤を続け、その困難な日常勤務の間二人の子供を授かったりする喜び、その子が不慮の事故で死亡するなどの打ち続く悲しみ。歌詞にある ♪妻と二人で 沖行く船の 無事を祈って 灯をかざす♪ は、娘雪野(有沢正子)と結婚した名取進吾(仲谷昇)の夫婦がカイロに赴任するにあたって、灯室にいた四郎ときよ子は沖を進む二人の船に向かって灯をかざす。老いた二人が双眼鏡に食い入る中に、旋回する灯台の灯に応えて、船からは遠く汽笛が聞こえてくる。
伊勢 おかげ横丁 徳力富吉郎版画館「志摩安乗灯台」より
To Home 喜びも悲しみも幾年月1歌詞
昭和32年
【安乗の稚児】  伊良子清白

志摩の果(はて)安乗の小村(こむら)
早手風(はやてかぜ)岩をどよもし
柳道(やなぎみち)木々を根こじて
虚空(みそら)飛ぶ断(ちぎ)れの細葉(ほそば)

水底(みなぞこ)の泥を逆上(さかあ)
かきにごす海の病(いたずき)
そそりたつ波の大鋸(おおのこ)
(よ)げとこそ船をまつらめ

とある家(や)に飯蒸(いいむせ)かへり
(お)もあらず女(め)も出で行きて
稚子ひとり小籠(こかご)に座り
ほゝゑみて海に対(むか)へり

荒壁(あらかべ)の小家(こいえ)一村(ひとむら)
こだまする心と心
稚子ひとり恐怖(おそれ)をしらず
ほゝゑみて海に対(むか)へり

いみじくも貴(たふと)き景色(けしき)
今もなほ胸にぞ跳(おど)
(わか)くして人と行きたる
志摩の果安乗の小村

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     喜びも悲しみも幾歳月(解説)   *08/5/10