対の遺伝子
- - - 7. 手抜きな王子
[ 6. モヤモヤ | 対の遺伝子Top | 8. 天然記念物 ]

彬と付き合うことになってから、そうなるまではわりと早かった。
セオリーでは付き合って一回目のデートで手を繋いで、二回目のデートで腕を組んで、三回目のデートでキスのはずなんだけど。
そう言うと、彬は露骨に嫌な顔をした。

「8年も一緒にいたのに、手を繋ぐなんて今更だろ」
「じゃあ腕組みは?」
「……そんなのいつだってしてただろ」

そう言えば、そんなことは日常茶飯事だったっけ。
有にもよく私はスキンシップ過多だって言われたなあ。

「だから、その辺は飛ばさせてもらった」
「……手抜きっぽくない?彬」
「8年の我慢のせいで限界を越えたから」

なによそれ。
まるで私が我慢させたみたいじゃない。

「だから、いいんだ」
「何がいいのよ」
「言って欲しい?」

どこの誰だかが言っていた。
彬は物静かで、見た目もよくて、まるで王子様みたいだって。

「泊まっていけよ」

本当の王子様は、そんなことは決して言わない。
直接的な王子の後頭部に、私は無言でチョップを食らわせた。