対の遺伝子
- - - 8. 天然記念物
[ 7. 手抜きな王子 | 対の遺伝子Top | 9. 親公認 ]

あたしの彼氏の双子の妹兼親友の彼氏、という微妙なポジションにいる彼は、全く以って天然記念物だ。
だって、初恋も、初めて付き合ったのも、きっと初めて寝たのも、たった一人。
今では珍しい、とんでもなく一途な男だと思う。

「笑だってそうだろう?」
「ううん、違うよ」

最愛の彼女のその答えに、かなりショックを受けた顔をする水瀬くんは、正直とっても可愛い。

「初恋の人は、彬じゃないよ」
「……誰だ!?」
「……ひみつ」

笑ってば……あんまりいじめちゃ可哀相でしょう。
水瀬くんはそういう冗談が通じるタイプじゃないし。
でも笑のことだから、きっとわかっててやってる。笑は典型的なジャイアンで、好きな子いじめをするタイプだ。

「オレも知ってるヤツか?」
「そりゃ、有も知ってるよ」
「同級生?」
「ううん、年上」

年上。
笑より誕生日の遅い水瀬くんにとって、それはちょっとしたコンプレックスだと思う。
ほら、よく見るとほっぺが、ピクピクして引きつっている。

「誰だと思う?彬」
「……さあ」
「興味ないの?」
「別に……」

笑はとっても楽しそうで、水瀬くんはとってもイヤそうだ。
それを見ていると二人の力関係っていうのが、よくわかる。

「興味ないんだ……」

その悲しそうな顔に、演技だとわかっているくせに水瀬くんは焦った顔をした。

「いや、そういうわけじゃ」
「彬にとって、私ってどうでもいいんだね」
「……そんなことあるわけないだろう!」

今にも泣き出しそうな笑に、普段物静かな水瀬くんが大声で反論した。

「俺は笑のことならなんだって知ってたいんだ!!」


* * * * *


「……お前ら……他所でやれよ」

衆人監視の目に、有ははずかしそうに顔を赤くしながら呟いた。
ああ、水瀬くんを笑えない。
そんな有を可愛いなんて思ってしまう、あたしもやっぱりベタ惚れなのかもしれないから。