対の遺伝子
- - - 12. 君がいない
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君がいない。

「だから、たったの三日だろ!?」

君がいない。

「あ〜き〜ら〜!」

君が、どこにも、いない。

「だから!笑は三日後には帰ってくるって言っただろ!たった三日でそんな死にそうな顔するなよ!」
「……三日もいない」
「……お前さぁ」

自分でも今うっとおしい男になっているとは思うが、そうなってしまうのだから仕方ない。
笑が友達と軽井沢に行ってしまった……それだけのことなのに。

(「お土産買って来るね!」)

嬉しそうに出かけていった笑。
俺と三日も逢えないことなんて、気にもしていないみたいに。
それが……どうしてだろう、とても寂しかった。

「お前ってほんとに笑がいないとダメなのな」
「……悪いか」
「悪いだろ。人間としてそれ、ダメだろ」

俺は確かに、笑にとても依存している。
それは事実だし、隠す気もない。
―――――君がいない。
それがこんなにも、こんなにも、苦しい。

笑を失ったら、俺はきっと生きていけないだろう。
そんなことを言ったら、君は少し怒ったような顔をするだろうけれど。

「エミリー……」
「勝手に変な名前つけんなよ!」

有の部屋にある、笑お気に入りのテディベアをぎゅっと抱きしめる俺に、有は怒鳴る。
笑が気に入ってるんだ。だからこれはエミリーなんだ。
そう力説すると、有はガックリと肩を落とした。

「あきらぁ……」
「なんだ」
「お前さ……だったらなんで笑に行くなって言わなかったんだよ」
「……言えるか、そんなこと」

俺にだって男のプライドってものがある。
しかしその答えに、有は大いに不満だったようだ。

「だったら何でオレには言うんだよ!」
「……友達だから」
「……お前の判断基準、ほんとに理解できねえんだけど」

呆れたように言う有に、俺は返事を返さなかった。

君がいない。
君がいない。
君がいない。

君が帰ってくるまで―――――あと二日。