対の遺伝子
- - - 13. 心配性
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「笑が風邪!?」
「何驚いてんだよ。あいつだって一応人間なんだから、風邪のひとつやふたつ引くだろう?」

親友の大げさな反応に、オレはクールに返すと自分の座席へと向かった。最近成長期に入ったからか、椅子も机も多少窮屈になってきている。

「笑、熱とかあるのか?」
「あいつお子様体質だからなぁ。昨日の夜は40℃」
「40℃!?」
「今朝になったら下がってたから大丈夫だぞ?」
「……でも、40℃だなんて」

始まったよ。
何で彬はここまで笑に甘いんだ。よくわかんねえ。
幼馴染の彼が、双子の妹に抱いている想いに、その時のオレはまだ気付いていなかった。

「見舞いとか、行ってもいいか?今日」
「ああ!?そんなん必要ねえって」
「でも、行きたいから」
「彬……お前さぁ」

オレが水疱瘡で大変な目にあってた時も、お前顔なんか見せなかったじゃねえかよ、とオレが文句を言うと、彬は心外そうに眉を寄せた。

「水疱瘡患者に近づけるわけないだろ?俺、まだなんだから」
「あ?そうなんか?」
「ああ」
「でも今日行ったってお前、笑に風邪を移されるだけかもしれねえぞ?」
「笑の風邪ならいいよ」

だから、なんなんだよそれは。
風邪引いて苦しむのはお前なんだぞ。

「笑、弱ってたか?」
「え……?ああ、まぁな。あいつがおとなしいと家の中が静かでさぁ」
「そっか……」

何で彬の方が死にそうな顔をするのか。
笑がおとなしいってのは、いつもみたいに階段の手すりを滑り降りたりしないだけで、おとなしくベットで寝てるってわけじゃないんだぞ?
その証拠にあいつ、そんなに熱があるにも関わらず、アイス食ってたぞ。

「やっぱり、今日、見舞いに行く」
「あ、そ」

その日の放課後、彬が見舞いに来た時。
まさか薬で熱のだいぶ下がった笑が、ダンスダンスレボリューションを激しく踊っているなんて、この時のオレは予想だにしていなかった。
そのせいで、思いっきり彬に怒られた笑は不機嫌で、しばらく彼と口を聞かなかった。
そんな激しく落ち込む彬をなだめる役回りが、自分に回ってくるなんてことも、オレはもちろん、知らなかったのだった。