対の遺伝子
- - - 18. 等身大
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「等身大ドラえもん」
「はぁ?」
「笑が今、一番欲しいもの」

10万円以上もするその代物に、俺は違った意味で頭を抱えていた。

元々、笑はいわゆる女の子っぽいものに全く興味がない。
使っているのはリップクリームとハンドクリームと整汗剤だけだ。
しかもその使用理由はおしゃれじゃない。
唇がひび割れて痛いから、手が荒れて痛いから、汗臭いからというものすごく実用的理由だ。

だから、笑に誕生日だからといって、化粧品や女の子っぽいものを贈ることはできない。
本人が喜ばないものをあげるほど、俺は面の皮が厚くないのだ。

「何だそれ、笑が欲しがったのか」
「欲しいものあるかって聞いたら、そう言ってた」
「他は?」
「サバイバルナイフ」
「……他は?」
「でかいシャボン玉が作れるやつ」
「……ほ、他は?」
「スポーツカイト、だそうだ」
「笑のヤツ……」

彼女の双子の兄である有は、苦虫をつぶしたような顔になった。
そういう彼はこの間、恋人の誕生日に指輪を贈っていたっけ。

「指輪……なんてあげても、絶対つけないだろうな……笑だし」
「双子の兄の俺が言うのもなんだが、つけないと思うぞ。部屋に放置プレイじゃないか?」
「じゃあやっぱり、俺は等身大ドラえもんを買うしかないのか!?」
「泣くなよ……」

彼女の誕生日、俺はいつも頭を悩ませる。
でも高校生の俺に、そんなに高価なものが買えるはずもなく。
俺が等身大ドラえもんを彼女に贈るのは、就職して2年目のボーナス後のことだった。