対の遺伝子
- - - 19. 水玉パンツ
[ 18. 等身大 | 対の遺伝子Top | 20. ダンベル恋愛談義 ]

この双子との運命的な出会いは、最悪じゃなくちゃいけないのかもしれない。

笑と初めて出会った時、スケボーで後頭部を轢かれたらしい水瀬くん然り。
そして、有と初めて出会った時、はいていたパンツを見られたあたしも然り。

(「今時、水玉パンツかよ」)

デリカシーって言葉は、初対面の有には存在しなかった。
そしてこの双子は、どうやら、好きな子いじめが好きらしい。

「うわ〜……有って由紀にそんなこと言ったんだ」
「お前の彬に対する仕打ちよりマシだ」

いつ見ても言い争っているようで、実は仲がいい双子を見つめていると、水瀬くんが有に嫉妬にも似た気持ちを抱くのもわかるような気がする。
でも水瀬くんは有のことも好きで、あたしも笑のことが大好きだから、焦れるしかないのだけど。

「ホントは水玉とか苺柄のパンツにちょっとだけ憧れがあったくせに、このスケベ」
「あのな、お前のパンツがフツーに洗濯物として干されてるのを見てるオレが、そんなもんに今更反応するかよ」
「私、苺柄パンツなんて持ってない」
「トマト柄は見たことあるぞ」
「何チェックしてるんだか。有だってこの間、キリン柄のパンツ履いてたじゃん」
「アレは母さんが勝手に買ってきたんだろ!?」
「次は象さん柄かもね」

双子、というか兄弟がいるっていうのはこういうものなんだろうか。
あたしも水瀬くんも一人っ子なので、この辺りの感覚は良くわからない。同年代の男の子のパンツなんて見る機会はなかったし。

「有……お前、笑の下着チェックなんてしてるのか」
「してねえよ!でも洗濯物で干されてるんだから、目には入るだろ!?」
「見るな」
「彬……お前なぁ」

不毛な会話をしている二人を横目に、笑が私に近付いてきて、そっと耳打ちをする。

「由紀、有の誕生日プレゼント、もう買った?」
「ううん」
「あのさ、この間デパートで面白い毛糸のパンツ見かけたの!なんとトラ柄の男物!ね、それにしない?」

耳元に、面白すぎる誘惑。
あたしがそれを断るはず、ないじゃない?

こそこそと、女同士の悪企み。
有が履くのを嫌がったら、涙目でお願いしよう。
そして言ってやるの。

(「ラムちゃんパンツ、似合ってるわよ」)

ってね。
あの一言、未だに根に持ってるのよ?
あれ以来、一度も水玉パンツは履いてないんだから。

この双子との運命的な出会いは、最悪じゃなくちゃいけないのかもしれない。
でもそれも、最悪だけど最高の出会いだったと、信じてるの。