W渡辺
- - - 第7話 渡辺くんと大魔王 中編
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「小さい時から余計な虫がつかないように、大切に守ってきたわけだよ、俺様としては」
「……へ、へえ」
「寄ってくる虫があんまりにも多いんで、最初は不殺の精神だった俺様も、方向転換したわけだ」

放課後の生徒会室、目の前の書類を片付けることに没頭している俺を尻目に、会長は時政とのんびり話などをしていた。しかも内容がかなり物騒だ。そしてその殺意は間違いなく今、俺に向けられている。

「そんな俺様の努力を無視して、手を出してくる面の皮の厚いヤツには、もう二度と雛に近づくことができないようにしてやってるんだ」
「具体的に何してるんです」
「ふ、ふ、ふ……それをバラしたら面白くなくなるだろう?なあ?渡辺」
「……」

その笑顔が怖いから、俺の方を向かないでくれ。
初めて見る時政が思わず後ずさりしているのに、気付いていないわけではないだろうに……この人は確信犯だ。雛と同じで無駄に頭だけはいい人だ。

「俺様はお前のことは、ほんと、気に入ってたのになぁ。残念だよ」
「……」
「手痛い裏切りだよなあ?」
「そうですか」
「今なら間に合うぞ?とっとと別れろ、お前のためだ」
「お断りします」

考えても仕方がないとわかってはいても。
何で……何でこの人が、雛の兄なのか。
俺ってもしかしなくても、雛と付き合ってることだけがラッキーで、それ以外は不幸のどん底なんじゃないだろうか。

「で、でも会長……わざわざ政宗に突っかからなくても、雛ちゃんに付き合うのをやめろって言えばすむことなんじゃ」
「お前も賢そうな顔をして、お馬鹿だな、真辺。そんなことしたら、俺様が雛に嫌われるじゃないか」
「……」
「俺様は雛にとって、いつも優しい最高のお兄ちゃんであり続けなければならんのだ!」

時政の顔が引きつっている。
そうだろうな、わかるぞ、その気持ち。
でも諦めろ、この人は至極まともそうな顔をしているが……雛限定で変態だ。
さすがは幼馴染、俺達は視線だけでそんな会話をしていた。

「で、でも……雛ちゃんだって政宗のことが好きなわけで」
「気の迷いだ」
「……」

断言するな!
何気に失礼な人だな、会長。

「絶対に気の迷いだ!雛は俺様のお嫁さんになるんだって約束してるんだ!」
「……いくつの時の話ですか」
「雛が3歳、俺様が4歳の時だ」
「……」

雛は絶対意味なんてわかってなかったと思うのだが。
って言うか、今でさえそっちのことに執着も興味も薄いのに、そんなちびこい時のことなんて覚えてるわけもない。
俺は、未だ山積みになった書類の束を横目でちらりと見やると、もう一つ大きなため息をついた。一体いつまでこのねちこい攻撃が続くのだろう。

「大体お前には、俺様の気持ちはわからん!」

わかりたくないです。

「俺が、この俺様が、雛の最高の兄であり続けるために、どれだけ苦労してきたかわかるか!?生まれながらに脳味噌の構造が違うあの雛と同じような成績を保つのに、試験前には日夜を問わず勉強し、何だかわからんが、頭だけじゃなくてスポーツもそつなくこなす雛に、尊敬されるためだけに、一晩中ドリブルをし続けた俺様の、その血と!汗と!涙の結晶である可愛い可愛い雛を、大した努力もなしに横から掻っ攫いやがって!」
「そんなことしてたんですか……」

涙ぐましい努力だとは思うが、何だってそんなことしなくちゃいけないんだ。
この人の方向性そのものが間違ってる気がするのは、俺だけか?
いや、その同情の混じった視線から察するに、お前もそう思ってるんだろう?時政。

「お前、夏祭りに雛と二人で行っただろう」
「行きましたけど」
「帰りに、うちまで雛を送って来たらしいな」
「そりゃもう遅かったし……当然じゃ……」
「遅いと思う時間まで一緒にいたこと自体が悪いんだ」
「……花火大会って遅くないと、意味ないじゃないですか」
「うるさい!ひよりさんは喜んでも、俺様は認めん!」

……ひよりさん?
ああ、雛のお母さんのことか。そう言われて見れば、雛もそう呼んでたな。
なんと言うか、その……雛や会長のような子供がいるとは思えない容姿の、ふわふわした感じの人だったな。

「ひよりさんって……誰ですか?」

時政の言葉に、会長は「はあ?今更何言ってんだ、こいつ」といった感情を隠しもせずに、顔を歪める。
こっちが素なんだろう。ギャップが激しいからあんまりしないで欲しいんだが。

「ひよりさんはひよりさんに決まってるだろう」
「……」
「ひよりさんはな、母さん、とか呼ぶと……泣くんだ」
「へ?」
「雛が昔、ママって呼んだだけで泣いたからな。だからあの人はひよりさんであって、ひよりさん以外のものではありえんのだ」

時政の万年新婚な両親もどうかと思っていたが、同じ渡辺家でもこっちの渡辺家は、また輪をかけて変わっている。さすがは雛の家、という気がしなくもない。

(「雛ちゃんの彼氏!?ねえ、彼氏!?きゃあ!どうしましょう!」)

……そんな風に言われて、玄関先で顔から足まで触りまくられた時はどうしようかと思ったもんだが。兄と違ってえらく歓迎されていたような気がしないでもない。母と兄を足して、2で割ってくれたなら、俺としても楽だったのに。

思わず遠い目をした俺を、会長は眼光鋭く睨み付けた。

「お前、今俺様とひよりさんを足して、2で割ったらちょうどいいとか思っただろ」
「……!」

何故わかる!?
全くこの兄妹は……本当に無駄に勘が良すぎるぞ!

「そんなことは相良ちゃんによく言われているからな、お見通しだ」
「相良ちゃんって……うちのクラスの相良百合ですか」
「相良って知り合いが、お前には他にいるのか、真辺」
「いえ、いませんけど」
「なら聞くな」

雛といい、この兄といい、何故そんなに偉そうなのか。
無駄な自信だよな、本当に。
しかも一人称が気が付けば、俺様、だぞ?
この人を温厚な優等生だと思っている、職員室の面々に聞かせてやりたいもんだ。

「とにかく」
「なんです?」
「お前が雛と別れるまでは、お前は完全に俺様の敵だ。こんな書類攻撃だけで済むと思うなよ?俺様はやるとなったら徹底的にやることにしてるんだ。五体満足でいられるのも、今のうちだ」
「……」
「楽しみだなぁ、渡辺」

悪魔だ。
その笑い方を見たことのある人間はきっと今、雛の側にはきっといないのだろう。
……しつこそうだしな、見るからに。

しかし。
まずは肩に置かれたこの手に、思いっきり力を込めるのは、やめてくれないだろうか。
げんなりした気持ちを隠せずに、俺はもう一度、大きなため息をついた。


* * * * *


「マサムネ、どしたの?」
「……ああ、雛」

俺は疲れていた、そりゃもう最高に疲れていた。
それもそのはず、会長の策略はすさまじいものがあった。
気が付けば……体育祭実行委員長、文化祭実行委員長だ。了承した覚えもないのに。

権力ってこんなに理不尽なものだっただろうか……そしてこれはその乱用ではないのだろうか。
いくら俺がその理不尽さを訴えようとしても、あのにこやかな会長スマイルに、生徒ばかりか教師までもがコロッと騙され、聞く耳を持ちやしない。

「疲れた顔、してるね」
「そうだな、少し……疲れた、な」

普段なら真面目に自習のプリントをやっているところだが、さすがに今日はそんな気力がない。
提出も義務化されていないのなら、今日だけは甘えさせてもらおうと俺は思った。

「渡辺くん、皓さんに結構ヤラレてるみたいね」
「……相良」
「っていうかあの人、外面と大分違うよな……昔からああなのか?」

時政の質問は、もちろん雛ではなく相良に向けられたものだ。雛の前ではいいお兄ちゃんで通っているらしいあの会長の本性は、近くで見ていた相良が一番よく知っているのだろう。

「皓さんは、昔っから超偉そうだったわよ。一人称は常に俺様、だもん」
「……」
「わたしが雛と友達になった時も、そりゃすごかったんだから。彼氏チェックだけじゃなくて、友達チェックまで入るのよ?あの人」
「よく説得できたな。相良は会長の基準を満たしたってことなのか?」
「ううん、全然」
「は?」
「雛に近づくな〜近づくな〜ってうるさくってね。言っちゃったの。『ウザいのよ!バカ兄貴!』って」

相良、お前って奴は……すごいぞ。
ある意味尊敬に値するぞ、本当に。

「何かそう言うこと、言われ慣れてなかったみたいでね。えらくショック受けた顔してたわ、アハハ」

ショックを受けてるのは俺の方だ。

月曜日はサッカーボールがどこからか飛んできて、頭を直撃した。
火曜日は上履きの中に、ご丁寧にもすったとろろいもが入っていた。
水曜日は体操着が何故かピンクに染まっていた。
木曜日はロッカーの中に大量のエロ本が入っていた。
金曜日……今日が終われば、週末だ。それだけを心の中で唱えながら、無我の境地で俺は今生きている。

「でもねえ、やっぱりやることがねちっこいわよね?」
「とろろいもはねえよなぁ、チョイスが渋くないか?」

お前達にわかってたまるか。とろろいもが入っているとは思わずに、足を突っ込んでしまった俺の虚しさが。あのぬるっとした感じ……ご丁寧にもいやに弾力のあるとろろだったぞ。

「……」
「……雛?」

俺達の話を黙って聞いていた雛が固まった。

「ひどい」
「雛……」

一応実の兄より、俺を心配してくれるのかと思えば。

「私がとろろ好きなこと知ってるくせに、そんなことに使うなんてひどい」
「……」
「しかもその粘り気、間違いなく自然薯なのに、おいしいのに、高いのに。ひよりさんに言いつけてやる」

お前の心配はそっちか!
俺でも、上履きの心配でもなく、とろろの心配か!ちょっとばかり悲しいぞ、俺は!

そんな俺の心を知ってか知らずか、雛は憮然とした顔のまま続けた。

「食べ物を粗末にする人って、嫌い」
「雛、それ皓さんには言わない方がいいわよ」
「なんで?」
「ものごっつく、ショック受けるから。そしてその分の皺寄せが渡辺君に行くから」

確かにそうかもしれない。
最近生徒会室で黙々と書類を片付けている間中、あの人に『俺様と雛のラヴ・ヒストリィ』なるものを聞かされ続けているから尚更そう感じるのかもしれないが……溺愛していると言ってもいいだろう、あれは。

しかし何だってあそこまで溺愛しているんだろう。
俺は一人っ子だし、時政もそうなので、その辺の感情はきっと一生理解できないだろうな。

「会長ってさ、昔からああなわけ?」
「あたしの知る限りでは、そうね」
「ん〜でもね、むかーしは喧嘩したこともあるよ?」

雛はのほほんと言ってのけたが、俺達にはそれは驚愕するに値する事実だった。
あの、会長が。
あの、雛を溺愛して、目の中に入れても痛くないという会長が。
その当人である雛と喧嘩したことがあるなんて、そんなことありうるのか!?

「私が3歳位の頃かなぁ。皓ちゃんがね、『ひなはおおきくなったら、おれのおよめさんになるんだぞ!』って、急に言ったの」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな」
「そりゃまた熱烈なプロポーズで……」
「でもね、私は拒否したの」
「……え?」

相良がきょとんとした顔で聞き返す。
すると雛は、にっこり笑ってこう言った。

「『やだあ!ひなはおおきくなったら、うちゅうひこうしになって、かせいにいって、せいぶつのこんせきをしめす、さいぼうをみつけるんだもん!』」
「……」
「そしたら皓ちゃんったら、ものすごーく、ものすごーく、怒った」

俺は、そんな色気のない理由で、プロポーズを断られた会長に多少同情しなくもなかった。
雛……お前3歳児なのにそんなことを考えていたのか。この分じゃ小学校の文集とかでよく書く『将来の夢』も、似たような可愛気のない内容だったんだろうな……。

俺がそんなことを考えている横では、時政が腹を抱えて大爆笑していた。

「あはっ……あはっ……はっはっは……く、苦しい……」
「皓ちゃんひどかったよ、それから一週間位、口もきいてくれなかったんだよ?」
「そりゃね……」
「でもまぁ、いっかって、放っておいたけど」

放っておいたのか。雛にとってはあんまり興味のないことだったんだろうな。
会長に比べれば短い付き合いではあるが、雛には得てしてそういうところがある。ひどく興味を引かれる物にはとことんこだわるくせに、関心のないものにはかなり冷たい。
……つくづく思うが、厄介な性格なのだ。

「でもやっぱり皓さんは昔っから雛のこと激ラブだったってことじゃない?」
「うん、ひよりさんが教育したんだって」
「……教育?」
「私がまだお腹の中にいる時に、催眠みたいに教育したんだって。『お兄ちゃんは妹を守らなくちゃいけない』って、ずーっと寝てる時も繰り返したって、言ってた」

なんだそれは?
それは家庭の教育方針として、間違ってないか?

「皓ちゃん単純だから、すぐに信じこんだみたい」
「へえ……」

何でだろう、俺は今かなり会長に同情している。
あんなに愛してやまない妹に、たった一言『単純』と評されているあの人は、何と言うか……可哀想だ。
隣で頷いているところを見ると、時政、お前もそう思っているんだな?

「雛」
「……何?」

俺はちょっと困ったような顔をしていたんだと思う。雛は珍しく怪訝そうな顔で俺を見上げていた。

「ちなみにお前、小学校の卒業文集で、将来の夢に何て書いた?」
「え?何それ」
「……いいから、言ってみろ」

むむぅと眉を寄せながら、雛は過去の記憶を辿っているらしい。
そんなに思い出せないってことは、やっぱり文集も雛にとっては興味のないことだったんだろう。
願わくば、俺がいつかそんな存在にならないように。

「んっとね……確か、冥王星探査機の技術者」

……。
……。
……。

いや、これ以上何も言うまい。
将来の夢に『剣道家』と書いた俺は、少し渋いが結構普通の子供だったことを、俺は初めて自覚したのだった。


* * * * *


「プロポーズを断られた?……はっ、それがどうした」

目の前に山と積まれた書類にかなりげんなりしつつ、昼休みの話題を俺は会長に振ってみた。
この人と一人で戦うのは精神衛生上かなりよろしくないので、俺は最近時政を巻き込むことにしている。

「大体俺様が雛にプロポーズを断られたのは、それ一回じゃないぞ」
「……はあ?」
「二回目は雛の小学校入学の時だ。その時は確か『やだ!雛は将来木星探査機の設計するの!』だった」
「木星ですか」
「三回目は雛が小学校三年生の時だ。その時は確か『や!雛は将来砂漠でも育つ稲の開発をするの!』だったな」

宇宙にコダワリがあるかと思ったら、そうでもないんだな、雛。
何だかジャンルがバラバラだぞ?
まぁ……その時雛が何に興味をひかれていたのか、すぐに分かるって感じもするが。

「四回目は雛が中学入学の時だ。この時は確か『えー?雛と皓ちゃんは兄妹だから結婚できないよ。近親相姦な犯罪者になりたくないもん』……ってな」

何か断り方がシビアになってきたな。
流石に成長したってことなんだろうか。

「そして……五回目がつい一昨日だ」
「へ!?」

その言葉に、時政が奇声を上げた。
そんな時政をギロリと睨み付けて、会長は俺をそれはもう満面の笑みで見つめた。
―――――はっきり言って、コワイ。

「雛は俺様に何て言ったと思う?渡辺」
「……さあ」
「ほうほほう、お前にわからないのか。そうか、そうだろうなぁ」

―――――いや、だからコワイです、会長。





「『私にはマサムネがいるからダメ』」





―――――!

「お前がいるからダメだってなぁ、あの雛が、今まで理系なことと法律でしか答えなかった雛が、そう来たもんだ」
「―――――ッ!」

ヤバイ。
顔に血が上るのが分かる。この人の前で赤くなるなんて自殺行為だぞ、俺。
でも、どうしよう。
―――――嬉しかったり、している。

案の定そんな俺を見て、会長の顔が引きつっている。
そして時政は爆笑寸前だ、あの顔は間違いなく笑いを堪えている顔だ。でもあいつもここで笑ったらどうなるか、分かっているから我慢しているんだろう……まぁ時間の問題だと思うが。

「嬉しいか、そうか、そうだろうな。俺様のガラスのハートが砕け散ってもお前は何にも感じないんだもんなぁ?」
「いや、それとこれとは」

ぶに、ぶにに。
思いっきり両頬をつねられても、赤い顔はなかなか治ってはくれない。

「邪魔してやる」
「……」
「徹底的に俺様は邪魔してやるからな、覚悟しておけ」
「……ひゃいひょお」
「間違っても俺様は将来、お前の義兄になんてならないからな」

ぐに、ぐにに。
つねる力が強くなって、流石に俺も痛い。
しかしそうか……将来そんなことになったら、この人が義兄になるのか……。

……。
……。
……。

イヤだな、それ。

「お前、今俺様が義兄になるのがイヤだとか思っただろ!?」
「……!」

だから!
何でこの兄妹は無駄に勘がいいんだ!ある意味恐ろしいぞ!

尚も俺の頬をつねるのをやめないその手から逃れようと、もがく俺と会長がもみ合っていると、がらりと生徒会室の扉が開けられた。そこには生徒指導の英語教師が立っている。
その瞬間、会長はぱっと手を離し、今までとはうって変わったような爽やかな笑顔で、くるりと振り返った。

「笹原先生、どうしました?」
「ああ渡辺、何だか進路指導のことで話があると、川上先生が探していたぞ?」
「職員室ですか?」
「ああ、早く行きなさい」
「わかりました、今、行きます」

インチキだ。
恐ろしい変わり身の早さだ、さっきまで鬼気迫って俺の頬をつねっていた人物とは思えない。
俺と時政は半ば呆然としながら、その様子を見守っていた。

教師と連れ立って生徒会室を出て行くその後姿を、頬を押さえながら見つめていると、ふっと会長は振り返り、その瞳に挑戦的な光を浮かべて不適に笑った。
そのまま、ぴしゃりと扉が閉められる。

「なぁ、政宗」
「……なんだ」
「こう言っちゃなんだけど……やっかいなのを敵に回しちまったよな」
「ああ、俺もそう思う」

だからと言って、別れるつもりなどあるものか。

「何とか……しないとな」

やりたくはなかったが、いたしかたないだろう。
俺は考えていたことを、実行にうつすことを決意した。

「何とかできんのか?」
「雛から、いろいろ聞いたからな」
「雛ちゃんから?」
「いわゆる、インプリンティングってやつさ」

かなり姑息な手段だが、仕方ない。

「時政、お前……今週の日曜、あいてるか?」

―――――決戦は、日曜日だ。