清水かつらに「あした」という詩があります。この中に<あしたの朝は浜に出て>という言葉があることから、この<あした>は<明日>のことです。私は中学生のころまで、この「浜辺の歌」の<あした浜辺をさまよえば>は<明日浜辺をさまよえば>だと思っていました。でも、それにしては次に続く詞が未来を語るには違和感があり、<明日・・・昔のことぞ忍ばるる>とは何か?長じて<あした=朝>と分かってその違和感は解消しました。しかし、2番目の<ゆうべ>も<昨夜>と思っていましたので、<昨夜・・・昔の人ぞ忍ばるる>とは何ぞや?過去の過去完了形か?<もとおれば>と一緒に辞書を引いて、その時<ゆうべ=夕方>とわかって、一挙に解消したのでした。解決したのはそれだけでなく、通常楽譜に表記してあります<忍ばるる>の<忍>も原詞では<しのばるる>だったことが分かりました。<忍ばるる>は出版社の校閲ミスと思われますので、当倶楽部では敢えて<しの(偲)ばるる>と表記します。
林古渓は、佐佐木信綱と交友のあった歌人、詩人、俳人の文人であったほか、漢文学者でもあったので、唱歌でありながらこうした表現になったのでしょう。こうした幼児期の誤解は<赤とんぼ・・・おわれてみたのは>などと随所に出てきます。実はこの「浜辺の歌」にはもっと難解な三番があって、諸説が乱れておりますが、此処では割愛しております。
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浜辺の歌
作詞:林 古渓(PD)
作曲:成田為三(PD)(倶楽部内曲目)
MIDI制作:滝野細道
(一)
あした浜辺を さまよえば
昔のことぞ しの(偲)ばるる
風の音よ 雲のさまよ
寄する波も 貝の色も
(二)
ゆうべ浜辺を もとおれば
昔の人ぞ しの(偲)ばるる
寄する波よ 返す波よ
月の色も 星の影も
*2006/SEP/01 開設曲
成田為三の当倶楽部内の曲目リスト
【成田為三】当倶楽部の作曲 |
曲 名 |
作 詞 |
歌 手 |
歌 い 出 し |
赤い鳥小鳥 |
北原白秋 |
- |
赤い鳥小鳥なぜなぜ赤い赤い実を |
雨 |
北原白秋 |
- |
雨が降ります雨が降る遊びに行き |
かなりや |
西条八十 |
- |
歌を忘れたカナリヤはうしろの山に |
舌切雀 |
北原白秋 |
- |
舌切雀はどこへ行たどこへ行た |
ちんちん千鳥 |
北原白秋 |
- |
ちんちん千鳥の啼く夜さは啼く夜さは |
浜辺の歌 |
林 古渓 |
- |
あした浜辺をさまよえば昔の人ぞ |
山のあなたを |
北原白秋 |
- |
山のあなたを見わたせばあの山恋し |
りすりす小栗鼠 |
北原白秋 |
- |
りすりす小りすちょろちょろ小りす |