清水かつらに「あした」という詩があります。この中に<あしたの朝は浜に出て>という言葉があることから、この<あした>は<明日>のことです。私は中学生のころまで、この「浜辺の歌」の<あした浜辺をさまよえば>は<明日浜辺をさまよえば>だと思っていました。でも、それにしては次に続く詞が未来を語るには違和感があり、<明日・・・昔のことぞ忍ばるる>とは何か?長じて<あした=朝>と分かってその違和感は解消しました。しかし、2番目の<ゆうべ>も<昨夜>と思っていましたので、<昨夜・・・昔の人ぞ忍ばるる>とは何ぞや?過去の過去完了形か?<もとおれば>と一緒に辞書を引いて、その時<ゆうべ=夕方>とわかって、一挙に解消したのでした。解決したのはそれだけでなく、通常楽譜に表記してあります<ばるる>の<忍>も原詞では<しのばるる>だったことが分かりました。<忍ばるる>は出版社の校閲ミスと思われますので、当倶楽部では敢えて<しの(偲)ばるる>と表記します。
林古渓は、佐佐木信綱と交友のあった歌人、詩人、俳人の文人であったほか、漢文学者でもあったので、唱歌でありながらこうした表現になったのでしょう。こうした幼児期の誤解は<赤とんぼ・・・おわれてみたのは>などと随所に出てきます。実はこの「浜辺の歌」にはもっと難解な三番があって、諸説が乱れておりますが、此処では割愛しております。
 Photoes taken by Hosomichi

     JASRAC No.067-0300-3
     大正2年(1913年)

   

 浜辺の歌


    
    作詞:林  古渓(PD)
    作曲:成田為三(PD)(倶楽部内曲目)
    MIDI制作:滝野細道



    (一)
   あした浜辺を さまよえば
   昔のことぞ しの(偲)ばるる
   風の音よ 雲のさまよ
   寄する波も 貝の色も


   (二)
   ゆうべ浜辺を もとおれば
   昔の人ぞ しの(偲)ばるる
   寄する波よ 返す波よ
   月の色も 星の影も



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    *2006/SEP/01 開設曲






















成田為三の当倶楽部内の曲目リスト

成田為三当倶楽部の作曲
曲  名 作  詞 歌  手 歌 い 出 し
赤い鳥小鳥 北原白秋 - 赤い鳥小鳥なぜなぜ赤い赤い実を
北原白秋 - 雨が降ります雨が降る遊びに行き
かなりや 西条八十 - 歌を忘れたカナリヤはうしろの山に
舌切雀 北原白秋 - 舌切雀はどこへ行たどこへ行た
ちんちん千鳥 北原白秋 - ちんちん千鳥の啼く夜さは啼く夜さは
浜辺の歌 林 古渓 - あした浜辺をさまよえば昔の人ぞ
山のあなたを 北原白秋 - 山のあなたを見わたせばあの山恋し
りすりす小栗鼠 北原白秋 - りすりす小りすちょろちょろ小りす