昭和10年(1935年)  JASRAC No.086−0009−1
明治一代女

この曲「明治一代女」は、花井お梅事件(別名箱屋事件)を題材にした川口松太郎の小説を元に作られたものです。小説、戯曲の 方は歌舞伎役者や道楽者など男女間の愛憎が複雑に絡まった物語ですが、実際の事件は比較的単純です。美貌で勝気な芸者お梅は二十歳そこそこで待合を持ち女将となりますが、名義人を父にしたばかりに自分の待合から締め出されます。何とか店を取り戻そうと、かつて自分が芸者時代に箱屋として使い、そのときも待合の使用人として使ってやっていた峯吉(唄では巳之吉)に相談します。しかし峯吉は多大の恩にも拘らず、欲に目がくらんで、父親の側に立ってお梅を苛み、あろうことか関係を迫ります。逆上したお梅は峯吉を浜町河岸に追い、背中に出刃包丁を突き立て殺害します。峯吉殺しを父親に告げてからお梅は日本橋久松署へ自首しました。男尊女卑、家父長制のこの時代、ちょっと早ければ朝右衛門の登場となったでしょうが、それでも無期懲役となり、稀代の毒婦の名を冠せられたのです。


新橋喜代三(しんばしきよぞう、1903年〜1963年(昭和38年)、鹿児島県種子島出身の芸者歌手)は中山晋平の後妻となったことで有名です。ために本名は中山嘉子。デビュー曲「鹿児島小原節」が晋平の作曲だったのが縁でした。昭和10年前後は、葭町(藤本)二三吉、市丸、小唄勝太郎などなどの芸者歌手全盛の時代でしたが、喜代三は中山晋平との結婚を機に引退をし、晋平没後彼の音楽普及に努めていました。

作詞:藤田まさと(C)(曲リスト)
作曲:大村能章(C)
歌唱:新橋喜代三
制作:滝野細道

(一)
浮いた浮いたと 浜町河岸に
浮かれ柳の 恥かしや
人目しのんで 小舟を出せば
すねた夜風が 邪魔をする
【新内ながし】
『巳之さん堪忍して下さい。騙すつもりじゃ
 なかったけど どうしてもあの人と別れら
 れないこのお梅の気持 騙したんじゃない
 騙したんじゃない・・・ ア 巳之さんお
 前さん何をするの 危ない!危ない!堪忍
 して か・・・
 ア 巳之さん巳之さん あたしは大変なこ
 とをしてしまった』

(二)
怨みますまい この世の事は
仕掛け花火に 似た命
もえて散る間に 舞台が変わる
まして女は なおさらに

(三)
意地も人情も 浮世にゃ勝てぬ
みんなはかない 水の泡沫
(あわ)
泣いちゃならぬと 言いつつ泣いて

月に崩れる 影法師


懐メロ  八洲秀章&抒情歌  童謡・唱歌   「細道のMIDI倶楽部」TOPへ *2006/SEP/01 開設曲

  藤田まさとの当倶楽部内の曲目リスト

藤田まさと当倶楽部の作詞曲
曲  名 作  曲 歌  手 歌 い 出 し
青葉の夢 長津義司 東海林・沢 青葉の夢にさそわれてゆくや涙の精進湖よ
あの夢この夢 倉若晴生 伏見信子 あの街でこの街でひと目見た人あった人
潮来夜船 倉若晴生 北廉太郎 雨はやんだに晴れたのに娘船頭さんなぜ
大江戸出世小唄  杵屋正一郎  高田浩吉  (湯浅みか名)土手の柳は 風まかせ好きな
大利根月夜 長津義司 田端義夫 あれをご覧と指差す方に利根の流れを流れ
岸壁の母 平川浪竜 菊池章子 母はきました今日も来たこの岸壁に今日も来
傷だらけの人生 吉田  正  鶴田浩二  何から何まで真暗闇よすじの通らぬことばかり 
旅笠道中 大村能章 東海林太郎 夜が冷たい心が寒い渡り鳥かよ俺等の旅は
妻恋道中 阿部武雄 上原 敏 好いた女房に三下り半を投げて長どす永の旅
麦と兵隊 大村能章 東海林太郎 徐州徐州と人馬は進む徐州いよいか住み良い
まつの木小唄 作曲者不詳  二宮ゆき子 まつの木ばかりがまつじゃない時計を見ながら
明治一代女 大村能章 新橋喜代三 浮いた浮いたと浜町河岸に浮かれ柳の恥かし
流転 阿部武雄 上原 敏 男命をみすじの糸にかけて三七さいのめ崩れ